空き家の定義
目次
空き家対策特別措置法が成立、空き家は減るか?
「空家等対策の推進に関する特別措置法案」(以下、空き家対策特別措置法)が国会解散間近に成立しました。果たして空き家問題は解決するのでしょうか?
それだけ急務な問題ということなのです。これはどういった制度なのか、それによって空き家問題は解決するのか、思案してみました。
空き家対策を法的規制する要因とは?
総務省の住宅・土地統計調査の速報値によると、全国の空き家は2013年10月現在時点で約820万戸、総住宅数の13・5%に上り、適切に管理されていないことから社会問題化していました。
地方だけでなく、都市部でも空き家は増えつつ、管理が不十分な空き家が防災や防犯、衛生上の問題、景観の悪化などの諸問題を引き起こしています。地域住民の安全を考慮して、地方自治体では空き家の管理条例などを制定して、対応を急いでいるのが現状です。
空き家の管理条例は全国で303条例あり、このうち「行政代執行」を規定している条例は177条例と半数を超えているといいます。
空き家といえども個人の私有財産なので、条例などによって所有者に的確な管理の勧告や命令を行うことになります。それでもなお適正な管理が行われない場合が多くみられます。
放置されたままでは地域住民の安全が損なわれると判断された際は、地方自治体などの行政機関が所有者に代わって撤去する、言わば「行政代執行」が必要なのです。
こうした問題のある空き家の的確な管理を強く促し、倒壊の恐れがある空き家を撤去することなどを地方自治体が行いやすくするには、国が法的な根拠を提示して支援する必要があります。
法制度で空き家の対策はどう変わるのか?
「空き家対策特別措置法」の狙いは2つあり、1つがこれまで説明してきた問題のある空き家への対策です。
法律で問題のある空き家を「特定空家等」と定義して、市町村が空き家への立入調査を行ったり、指導、勧告、命令、行政代執行(所有者が命令に従わないときや所有者が不明な場合)の措置を取れるように定め、所有者が命令に従わない場合は過料の罰則を設けています。
また、登記があいまいで空き家の所有者が分からないという問題については、固定資産税などの課税のための個人情報を必要な範囲において利用できるようにも定めています。
もう1つの狙いは、活用できる空き家の有効活用です。
市町村に、空き家のデータベースを整備し、空き家や空き家の跡地の活用を促進することを求めています。
同時に、これらのことが確実に実行されるには、国が基本方針を定め、それに応じて市町村が独自に空き家に対する方策を立てる必要性があります。空き家対策の実施に必要な費用についても、国と都道府県が市町村に補助をするなど財政上の措置も必要となります。
「空き家対策特別措置法」は成立しましたが、施行は「公布の日から起算して3カ月以内、政令で定める日から施行」などとなっており、空き家対策はまだ先となりそうです。
国土交通省では、問題のある空き家の判断基準などのガイドライン作成に乗り出す一方、この度法案に盛り込まれなかった、固定資産税の減額についても改善を検討しています。
期間はまだかかりますが、空き家対策は着実に整備が進められているといって過言ではないでしょう。
空き家を撤去し更地にすると固定資産税の軽減措置が受けられなくなるので、不要な住宅の放置につながると指摘されています。また、空き家問題を受けて、今年に入ってから、民間企業が所有者に代わって空き家を管理するサービスや空き家を診断し活用方法を提案するサービスなどを開始するケースが増えています。
その一方で、住宅の除却や減築が進まないと2023年には空き家率が21%にまで増加するという予測をしています。
核となる市町村がしっかり空き家対策に取り組むことに加え、所有者自身が空き家にしない方策を考えることが求められることでしょう。
空き家が地方や大都市でも深刻な問題
地方も大都市も空き家が全国で13.5%、深刻な問題になっています。リサーチ結果が公表されてすぐに、空き家問題「供給過剰で空き家数・空き家率ともに過去最高」がニュースに報道された事は御存じの方も多いでしょう。
まずは、空き家の問題について考えてみたいと思います。
5年前の前回調査と比較すると総住宅数は6063万戸と305万戸増加しています。
一方、総世帯数は5246万世帯で248万世帯の増加で、昭和43年に総住宅数が総世帯数を上回って以降、その差は広がり続けています。
その後空き家の数は増え続け、平成25年には空き家率が過去最高の13.5%にまで達しました。
空き家率の高い都道府県を見ると、最も高いのが山梨県の22.0%、次いで長野県が19.8%、和歌山県が18.1%、高知県が17.8%、徳島県が17.6%などと続き、甲信地方や四国地方で高くなっています。
また、別荘等の二次的住宅を除いた空き家率では、山梨県が17.2%でやはり最も高く、愛媛県が16.9%、高知県が16.8%で、5~6軒に1軒が空き家という事になります。
では、大都市圏ではどうでしょう。
首都圏(埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県)はいずれも空き家率の低い都道府県10位内に入り、11%前後の空き家率となっています。
しかし、リサーチ結果によると関東大都市圏(さいたま市、千葉市、東京都特別区部、横浜市、川崎市、相模原市及びその周辺市町村)の総住宅数は1838万戸もあり、そのうち空き家の数は210万戸にも及び、空き家全体の1/4を占めます。
また、大阪府の空き家率は14.8%、別荘等の二次的住宅を除いた空き家率では14.5%と全国で16番目に高くなっています。
つまり、大都市圏でも空き家の問題は深刻なのです。
住宅が余っている状況なので、老朽化したり立地条件が悪かったりする住宅の利用意向は低くなります。空き家の内訳では、賃貸用の住宅が半数強(52.4%)を占めるので、借り手がつかないまま空き家になっているのが最大の要因です。
また、別荘などを使いこなせない(5.0%)、売却したいが売れない(3.6%)といった要因のほか、とりあえず放置している住宅も多いことが問題となっています。
例えば、相続した親の家を不便な場所にあるからと、子どもたちが住まないまま放置するなどです。
さらに、住宅を取り壊して更地にすると固定資産税などが一挙に増える税制、現在の建築基準法では有効な住宅に建て替えられないなど法規制が空き家を誘引している側面もあります。
住宅の建て方別では、一戸建てが2860万戸で全体の54.9%と過半数を占めるが、増加割合ではマンションなどの共同住宅のほうが顕著で、平成25年に2209万戸(42.4%)に達しました。
その共同住宅では、3~5階建てが835万戸と多いものの、6階建て以上の高層のものが785万戸に達し、増加割合が顕著で、高層化が進んでいることが分かります。エレベーター有りの共同住宅は全体の45.4%、オートロック式は31.8%とぞれぞれ前回より増加しています。
今後は、高齢化社会により高齢者向け住宅が増える
今回の調査で高齢者のいる世帯は、初めて2000万世帯を超える2086万世帯になり、全体の40%の割合、今後ますます高齢者世帯の増加で高齢者対策を施した住宅が増えると予想されます。
高齢者のいる世帯のうち、持ち家(1727万世帯)で高齢者等のための工事(※1)をしたのは346万世帯です。
高齢者のいる世帯の20%が工事を行っています。中でも多い工事は、「階段や廊下の手すりの設置」や「トイレの工事」、「浴室の工事」です。
※1 平成21年1月以降に行った高齢者などのための設備工事(将来の備え含む)
高齢者等のために、いわゆるバリアフリーへの改修工事を行う一方で、高齢者の有無にかかわらずバリアフリー仕様にしている住宅自体も増えています。
全体の50.9%で、手すりの設置や段差の解消、車いすで通行可能な廊下幅などの対応です。
「サービス付き高齢者向け住宅」など高齢者向けの住宅が増えているとも関係があるのでしょう。
地方でも都市部でも空き家が増加すると、どんな問題が生じるのか?
国土交通省が開催している「個人住宅の賃貸流通の促進に関する検討会」のデータとして公表された調査結果で、空き家所有者の7割が今のまま放置していることが分かりました。
空き家が急増する原因はなにか? 空き家が増えるとどういった問題が起きるのか?
空き家の所有者の7割がとりわけ何もしていない状況です。
国土交通省では、既存の住宅を活用した賃貸流通マーケットの整備を図ることを主眼として、「個人住宅の賃貸流通の促進に関する検討会」を設置し、検討を進めています。
その第3回目の会議において、価値総合研究所が行った「空き家」に関する調査結果が公表されました。
その結果によりますと、調査対象者1万5193人のうち17.7%が空き家を所有していました。
内訳は一戸建て(74.1%)が多く、立地は田舎(農山漁村地域)や郊外よりも市街地(35.5%)の方が多いことが分かりました。
空き家となった理由では、別の住宅に住み替えた後、当面は売却や賃貸をするつもりがないまま放置していたり、親から相続したままだったり、あるいは別荘などとして購入したが使っていないといった状況が浮かび上がりました。
また、空き家所有者のうち、売却や賃貸などを検討しているのは24.0%で、71.0%の人は特に何もしないまま放置している状態でした。
さらに空き家について、とりわけ管理すらしていない人が12.8%もいました。
今後空き家はなぜ増えるのか? なぜ売却したり賃貸したりしないのか?
空き家のまま放置されれば、防犯、防災などさまざまな問題もあるからです。
全国の空き家の総数(総務省平成20年)は約757万戸で空き家率は13.1%と高いのです。
そのうち個人住宅が約268万戸を占め、増加の一途をたどっています。
理由はさまざまですが、処分しづらい古い家が余っているということです。
既に住宅ストック数は総世帯数を上回り、家余りの状況にあります。
立地条件が良いなどで、受け継いで住みたい、あるいはそれ相応の価格で売却できる、リフォームしてもそれなりの賃料で貸せるという住宅であれば、空き家にはならないのです。処分しづらい家が、適切な管理もされず劣化が進み、資産価値も下がるという悪循環が生じているのが空き家の現状です。
ほかに税法上の問題もあります。
空き家を取り壊して更地にすると固定資産税が高額になるので、とりあえず住宅のまま置いておくということです。
また、現行の建築基準法に合致せず、今と同程度の大きさの住宅が建築できないため処分できないといった場合もあります。
管理されていない空き家は、景観が悪くなるだけでなく、ゴミの不法投棄のたまり場になったり、放火や不法侵入など犯罪の温床になる懸念があるほか、地震などの災害が発生した場合に倒壊して、避難路をふさぐといった大きな問題を生じさせることになります。
国土交通省や地方自治体もこうした問題を受けて、空き家対策の条例を制定する地方自治体も出てきました。
また、住宅を再活用したり、他の用途に転用したりすることを支援する措置なども取られ始めています。
ただし、空き家を相続しても登記の書き換えを行っていないなどの理由で、空き家の所有者が特定できない事例も多くみられます。
危険な空き家の情報収集や所有者の特定から始めることになります。国土交通省でも「空き家再生等推進事業」で、空き家の解体や活用、所有者の特定などに補助を行っているほか、「高齢者等の住み替え支援事業」や「空き家住宅情報サイト」などの施策を打っています。
また、空き家を含めた個人住宅の賃貸流通を促進するための課題の分析や、そのために必要なルール、ガイドラインなどの策定を主な検討事項とする場として、先に挙げた「個人住宅の賃貸流通の促進に関する検討会」が設置されました。
空き家の課題解決は一筋縄ではいかないのです。
なぜなら過疎地域、郊外型団地、木造住宅密集地などによって、空き家が発生する経緯や解決すべき課題、対応方法などが異なるからです。今後は人口の減少や単身世帯の増加などで、さらに空き家は増えると見られています。
国、地方自治体、地域住民や民間の力をまとめて、ひとつひとつ解決していくことになるでしょう。
空き家の定義
空き家対策特別措置法では、空き家を次のように定義しています。
空家等とは、建築物又はこれに附属する工作物であって居住その他の使用がなされていないことが常態であるもの及びその敷地(立木その他の土地に定着するものを含む。)をいう。(空き家対策特別措置法第2条1項)
空き家の「基本指針」
「建築物」「これに付属する工作物」について、
①「建築物」
土地に定着する工作物のうち、屋根及び柱又は壁を有するもの(これに類する構造のものを含む)、これに附属する門又は塀等
②「これに附属する工作物」
ネオン看板など門又は塀以外の建築物に附属する工作物
市町村は、上記①②のうち「居住その他の使用がなされていないことが常態であるもの」を空家等と判断し、空き家対策特別措置法を適用することになります。
空き家とは
①二次的住宅
別荘……週末や休暇時に避暑・避寒・保養などの目的で使用される住宅で,ふだんは人が住んでいない住宅
その他……ふだん住んでいる住宅とは別に,残業で遅くなったときに寝泊まりするなど,たまに寝泊まりしている人がいる住宅
②賃貸用の住宅 54.5%
新築・中古を問わず,賃貸のために空き家になっている住宅
③売却用の住宅
新築・中古を問わず,売却のために空き家になっている住宅
④その他の住宅 35.4%
上記以外の人が住んでいない住宅で,例えば,転勤・入院などのため居住世帯が長期にわたって不在の住宅や建て替えなどのために取り壊すことになっている住宅など
①二次的住宅③売却用の住宅については特に問題ありません。なぜなら人の管理がされるからです。
問題になるのは入居者が決まらない②賃貸用の住宅と④その他の住宅です。
平成20年住宅・土地統計調査によると「賃貸用の住宅」の空き家数が413万戸、「売却用の住宅」の空き家数が35万戸。「その他の住宅」の空き家数は268万戸です。
「その他の住宅」の空き家が増加するケースとしては、その他の空き家は、居住者が何らかの理由によって長期間不在になっているものであるが、今は居住者がいなくとも、いずれ誰かが使う予定になっていて適切に管理されているならば問題はない。
しかし、誰も使う予定のないまあ放置されているケースでは、外部不経済の問題を発生させる可能性が高くなる。
そうなんです。誰も使わないでまたは使う予定のない放置された物件が問題なのです。
居住していた親は亡くなったが、使っていた家財道具や仏壇が残されており、愛着があって貸したり手放したりすることができない、あるいは年数回の帰省の際に使うために残しておきたいなどの理由により、空き家のままにされているケースは多い。
「愛着」という心情面・感情面っていうのは大きいと思います。見知らぬ誰かに使われることには抵抗があるのは自然です。
また、市場に出したとしても、借り手や買い手がつく可能性がほとんどないと考えられる地域では、空き家のままにしておくしかないという場合もあろう。
立地条件や築造の状態などによっては”通常の”不動産市場では買い手が見つからないケースはありうると思います。
このほか、その他の空き家の中には、相続した人を含め、所有者が所在不明になっているケースもあると考えられる。
”所有者の所在不明”っていうのは空き家問題の大きな原因の一つです。兄弟姉妹など相続人が複数いて意見がまとまらないといったことや所有者が遠方に住んでいたり、登記を書き換えていなかったり。
「その他の住宅」の空き家の問題は以上です。しかし空き家の種類で一番大きなウェイトを占めるのは「賃貸用の住宅」の空き家です(54.5%)。「賃貸用の住宅」の空き家が増加することで起きる問題はなんでしょうか?
空き家の判断基準とは
特措法は昨年11月に成立しましたが、市町村が空き家を判定するための基準について具体的な記載がありませんでした。
そういったことから、空き家対策の特別措置法の一部が平成27年2月26日施行されました。国土交通省と総務省は同日、対策推進のために国や自治体が果たすべき役割を示した指針を公表し、空き家かどうかを判定する目安として、「建物が1年間にわたって使われていないこと」と示されました。
指針では、「空き家の基準として、建物への人の出入りや電気・ガス・水道の使用状況をふまえ、1年間を通じて使われていないこと」とし、市町村は、必要と判断すれば撤去や跡地活用の検討などを行い、国と都道府県が援助するということです。
また、固定資産税の請求において、納税者を特定するために登記情報以外にも、固定資産課税台帳を使用することが許されます。
空き家対策特別措置法は、全国にある適切な管理が行われていない空き家等が防災、衛生などで住民に悪影響を及ぼすと、自治体が指定した場合は必要な調査を行い、強制代執行で撤去する権限を与えるというものです。
空き家の固定資産税
空き家のこれまでの法律では、70年代に住宅が不足していた時代に、家を確保するために作られた制度がそのまま残っていたため、固定資産税が次のように優遇されてきました。
●住宅の敷地が200平方メートル以内 空き家の固定資産税は更地の6分の1
●住宅の敷地が200平方メートルを超えた部分 更地の3分の1
今まで空き家は更地に比べて固定資産税が最大6分の1に優遇されてきましたが、相続人にとっては、その優遇がなくなるということです。
これによって、空き家の相続人たちにとっては固定資産税が現在の6倍になることもあり、いよいよ不動産リスクが多くの人に身近に迫ることになります。
今後、特措法の施行によって、相続放棄や売却が増加することが考えられ、不動産市況の悪化につながるとの見方が強いと考えられます。
空き家に関する意識調査
親の住まいについて、すでに親が亡くなっている人(親と別居する30代以上の男女500人を対象)によると、
①相続しなかった人 36.5%
②売った 22.7%、
③自分が住んでいる、取り壊した 12.1%
になりました。
基本的には相続しないと考えている人が多く見られました。
東京都内で見れば、東京都都市整備局が行った実態調査では、東京都の空き家総数は平成20年で、75万戸に。特に大田区、足立区に多く見られます。建築時期では昭和55年以前が30%以上を占めており、空き家継続期間は1年未満が約80%となっています。
また、リフォームも約36%しか行っておらず、入居者がなかなか決まらない要因ともなっています。
ちなみに駅からの距離は500メートル未満が26.7%、徒歩10分未満が62.8%と決して悪い立地条件ではありませんでした。