「空き家 活用 事例」
増え続ける空き家を、高齢者の住まいや、子供の保育の場など、福祉の分野で活用する取り組みが各地で進んでいます。
物件に求められる条件は厳しく、使える空き家が少なかったり、大規模な改修が必要だったりするため、なかなか広がらないのが現状です。
施設と自宅の中間
高齢化率約40%の大分県豊後大野市。市内で最も高齢化率の高い緒方地区に、低所得の高齢者などのための住まい「くすのきハウス」があります。
同市の養護老人ホーム「条楽荘」の運営法人が、築22年、木造平屋の3DKの空き家を借りて2014年10月から運営しています。
利用料は、家賃と食費や光熱費込みで、1日1900円です。
入居者の見守りを兼ね、食事は条楽荘が用意します。
この家は、住人の女性が亡くなってから10年ほど空き家で、親族の女性が、草刈りや風通しのため隣の大分市から1時間ほどかけて毎月訪れていました。
女性は「空き家の管理は大変。借りてもらえるだけで助かるし、法人相手の契約なので安心」と喜んでいます。
常楽荘は昨秋、豊後大野市内に3ヶ所の「くすのきハウス」を整備。
家族から虐待を受けたり、認知症になったりして一人暮らしが難しくなった高齢者の受け皿になり、この1年間で27人が利用しました。
昨年11月に入居した男性(78歳)は下宿先が火事になり、市の仲介で住み始めました。
今は、元の大家だった認知症の男性(74歳)と2人で暮らしています。
常楽荘の施設長は
「空き家は多いが、老巧化が激しく使える物件を見つけるのは大変」としつつ、「手助けがあれば地域で暮らせる高齢者は多く、施設と自宅の中間の場所として、一軒家を使う意味は大きい」と話しています。
定期的見守り
京都市は、ソフト面のサポートで空き家減らしに取り組んでいます。
市の呼びかけで不動産業者と社会福祉法人が協力し、独り暮らしの高齢者と空き家のマッチングを行っています。
失火や孤独死などを心配し、高齢者に貸し渋る大家が多いことから、入居者の定期的な見守りを約束し、大家が安心して貸せるようにしました。
今年度は17件の契約が成立しました。
不動産会社は、この取り組みが広まれば、何となく不安という理由で貸し出されていない優良な空き家も市場に出てくるはずと期待しています。
保育事業に活用する動きもあります。
NPO法人フローレンスは東京都内を中心に14ヶ所で、マンションの空き家などを活用した小規模保育所を運営しています。
資金が一般的な保育所より少なくてすみ、比較的開設しやすく、どこもほぼ満員です。
今後もこのタイプの保育所を増やして行く予定です。
高いハードル
いずれの取り組みも、活用できる物件が少ないのが課題です。
小規模保育所の場合、1階にあり、避難経路を二つ確保できるなどの立地条件に加え、自治体の認可を受けるためには子供用トイレや給食設備など前面リフォームが必要になります。
高齢者福祉施設やグループホームに転用するにも、防火設備の設置などで大規模な改修が必要になる場合があるため、ハードルは高くなります。
また日本の建築関係の法律は、新築が前提で、中古の活用がしにくく、時代に合わなくなってきているのも要因です。
今後は規制の緩和や、活用を進めるコーディネーター役となる人材など、ハードとソフト両面のサポートが必要になってきます。
<空き家を福祉の用途で活用しやすい物件の条件>
・1階または平屋
・子供の泣き声などに近隣の理解がある
・近所に公園がある(保育所の場合)
・坂道がない(高齢者の場合)
・バリアフリー(段差がない)対応